2013年9月16日月曜日

LV-1.0 (9) ヘッドホンアンプ その2

LV1-HPAMは高音質で言うことないのですが、ヘッドホンアンプはその方式や回路構成で様々な製品があります。
自作派の方々が公開されている回路にも興味深いものが多いですし、最近ではIC単体でも高音質なヘッドホンアンプICが出回るようになりました。
LV-1.0は全てのコンポーネントがバラバラに出来るのが特徴です。HPA部分だけを差し替えることも当然出来るので、ここではいくつかのHPA基板を搭載して音の変化を見てみます。

■LME49600ヘッドフォンアンプ
LME49600を使ったHPAは様々な方が製作されています。
ここでは基板サイズがLV1-HPAMと同じで扱いやすいのでMi-Takeさん配布のLME49600.H.P.A.を購入してみました。


抵抗はニッコーム、コンデンサはニチコンの固体コンデンサをチョイス。
出力にスナパ回路を追加して、いくつか発振防止のコンデンサを追加しました。
DCサーボの出力もLPFを追加してあります。
電圧増幅段のオペアンプはLT1468-2を使いました。繋ぎやすいように外部配線は全てコネクタです。

音質はICらしくくっきりとメリハリのある音です。LV1-HPAMにあったホワイトノイズは皆無。
出力ドライバのLME49600がパワフルでちょっとくらいのスピーカでも駆動できます。
ただクリアすぎて音の余韻や空気感が今ひとつな感じもします。(LT1468のせいかな?)
オペアンプで音質が結構変わってくるので、好きな調整が容易なのが魅力です。

■ハイエンド・ステレオヘッドホンアンプキット「HPA_6120
デジットで販売しているHPAキットです。
ヘッドホンアンプのICにTPA6120A2を使っています。電流帰還型でソニーのHPAにも採用されている高音質なICです。SNはなんと120dB。

基板サイズが小さいのでユニバーサル基板でゲタを作りました。
デフォルトの回路構成はバランス(平衡)入力なので不平衡入力にします。
・R3A,R8Aを47Ωに変更
・R4A,R9Aを未実装
・CN1A,CN2A各々の2-3pinを接続
・CN1A,CN2A各々の1-2pin間に10kΩの抵抗を追加(チップ抵抗がやりやすい)
これで不平衡入力になります。入力保護の10kΩは未接続がないので無くてもいいかも。

音質は素晴らしいの一言です。
電流帰還アンプらしく、低音の応答がよく歯切れのいい高音が鳴ります。
ノイズは全く無し。SN120dBにウソはありません。
1チップでこれは中々反則ではないでしょうか。
先のLME49600アンプと比べると明らかに音の傾向が違うのですが、甲乙つけがたいです。
強いて言えば、調整箇所が全く無いので音作りを楽しめないところでしょうか?
ある意味完成された音です。

0dB HyCAA基板
たかじんさんのHPで配布されている真空管ヘッドホンアンプキットです。
通常100V以上の電圧が必要な真空管を12V駆動とし、classAA回路という特殊な出力段を持った実に魅力溢れる回路構成です。
さっそく配布して頂き組み立ててみました。
  

非常に丁寧なマニュアルがあり製作にはまったく困りません。
推奨のパーツからこんな感じにチョイスしてみました。
・C1,C2(入力コンデンサ)はWIMAの1uF
・C3,C4(出力デカップリング)は470uF/16Vの固体OSコンデンサ
・C5,C6は手持ちの1000uF/35Vの緑MUSE
・R17,R18は47ΩでここだけDALE抵抗
・オペアンプはV-AMPをJRCのMUSE02、C-AMPにAD8397を選択
・真空管はrussiaの12AU7/ECC82
・真空管照らすLEDはなんとなく桜色LEDを組み込んでみた(笑)

基板サイズはそれほど大きくなかったのですが、残念ながら真空管の高さがNGで内蔵が出来ません(泣)
とりあえあず接続してみて音質をチェックしてみました。

真空管アンプはあまり聞いたこと無いのですが、まず驚いたのがノイズが全く聞こえないことです。
真空管に多いハム音も全くありません。素晴らしい。
音は先のICアンプに比べてどうしても「クリア感」は控えめです。
しかしながら独特の聞きやすさ、音のまろやかさがあります。
単純に周波数特性の悪い、かまぼこ型の音というわけではなく表現するなら「美音」というべきでしょうか。
長く聞いてられる、柔らかい音です。出力にオペアンプ使ってるとは思えません。
ただ全てがいいわけではなく、聞く音楽のジャンルを選びます。
ジャズやオーケストラ、イージーリスニング向けの曲はとてもいいのですが、ポップスやロックはキレの悪さがどうしても迫力不足になってしまいイマイチさを感じます。
良くも悪くも真空管の味、というところでしょうか。

真空管の高さで組み込めないのがとても残念です。
この音は捨てがたいので、後日ユニバーサル基板で入るように組み直してみようかと思います。
真空管バッファ部分のみ切り出して、LV1-HPAMに繋ぐというのも面白いかもしれません。
classAA回路は無くなりますが・・・



以上3つのアンプを紹介しました。
実際どれがいい?と言われると難しいです。
個人的に好みなのはデフォルトのLV1-HPAMですが真空管も音の傾向としては魅力的です。
ICアンプは音いいのですが、何かひと味足りない感じがしてしまいます。

他にもLH0032回路を使った物なども作ってみる予定なので、出来次第紹介したいと思います。

LV-1.0 (8) ヘッドホンアンプ その1

前回更新から大分時間が空きました。
相変わらずLV-1.0の紹介です。

LV-1.0(5) でヘッドホンのノイズが気になると書きました。
これについていろいろ試してみたいと思います。

LV-1.0はディスクリート回路で構成された高品質なヘッドホンアンプ(LV1-HPAM)が搭載されており、そのままでも十分高品質です。オペアンプで構成されたヘッドホンアンプと比べても音の良さがはっきりと分かります。

回路構成は一般的なディスクリートアンプ回路ですが、出力段にトランスリニア・バイアス回路を採用しています。アイドリング電流を低めにしつつ、一般的なAB級SEPP回路相当の性能を実現しています。
(上記写真は出力電流を少しあげてアイドリング電流を上げ目にした改造してあります)

音はとてもいいのですが、ヘッドホンによってはサーっというホワイトノイズが耳に付きます。
使用しているヘッドホンのうちSHUREのSRH840(インピーダンス44Ω)ではまったく聞こえませんが、オーディオテクニカのATH-CK100PRO(インピーダンス39Ω)では少し気になるレベルで聞こえます。
カナル型のイヤホンは感度がいいのである程度は仕方ありませんが、 静かな曲をゆったり聴くとどうしても気になります。

 ノイズ対策をいくつか試してみました。
1.電源回路の見直し
LV-1.0の電源回路は±12Vです。一般的な3端子レギュレータによる安定化電源を採用しています。
LV1-HPAMの電源入力にリップルフィルタを搭載したり、大きめのLCフィルタを搭載してみたりしましたが効果は見えず・・・
最終的に電源そのものをディスクリート+オペアンプ制御で作り直しましたが、これでも効果はあまりありませんでした。ゼロでは無いのですがノイズは消えません。
(この電源回路については後日記事で紹介します)

2. 出力段のエミッタフォロワの安定化コンデンサの調整
出力のTHD(歪み率)改善が見込める調整(写真の100μFのOSコン)ですが、ノイズにはほとんど影響はありませんでした。音質の変化はあまり感じられません。

3.アイドリング電流を上げる
初期設計時のアイドリング電流は6mAですが、出力段の1W抵抗を変えることで多少上げる事ができます。
出力電流制限の抵抗を82Ωから51Ωにすることでおおよそ10mA程度になります。
よりA級動作に近づくわけですがノイズにはさほど影響ありませんでした。
音質は少し音の立ち上がりがはっきりしたような感じがします。

4.出力アイソレータを変える
LV1-HPAMの出力には発振防止用に10Ωと2.2uHのアイソレータが入っています。
あまりやりたくないですが、直列抵抗分を増やしてノイズ対策を行ってみます。
どういうことかというと・・・
本基板の入力コネクタを外してOpenにしてもノイズは変わらず聞こえます。
ただこの時のノイズ音量は入力ケーブルを繋いでいた時とほとんど変わっていません。
ということは入力信号にノイズが混入していて増幅しているわけではなく、聞こえているホワイトノイズは本アンプ自身から発生しているノイズということが分かります。
意図的に出力に抵抗成分を増やす事により、このノイズを減衰させ聞こえなくするのが目的です。
勿論、抵抗成分が増えるため入力される音声も少し下がります。このため少しボリュームを上げてやります。
但しいいことばかりではなく、出力に直列に抵抗成分が入ってることにより音質そのものが変化してしまいます。インピーダンスの高いヘッドホン(300Ωなど)だと無視できるかもしれませんが、16Ω~50Ω程度の低いインピーダンスのヘッドホンだと無視出来ない影響が出る可能性があります。


まずLV1-HPAMについている10Ωと2.2uHのアイソレータを外して短絡しておきます。
上記回路をLV1-HPAMとヘッドホンジャックの間に組み込みます。

ヘッドホンジャック基板の上にスペーサで2F建てになるように組み込みました。
L1以外全て調整出来るように交換可能なソケットにしています。
抵抗は交換しやすく音質的な評判もいいニッコームのプレート抵抗を使っています。

R1は変えても音質もノイズもあまり変化ありません。R2も同様です。
どちらも発振防止のアイソレータとスナパなので発振しないところで設定出来れば問題ないでしょう。
R3が大きく影響します。R3をいくつか差し替えてみると

 4.7Ω ・・・  ノイズはまだあるが音質的な影響はほとんど無い
 10Ω ・・・ わずかにノイズはある。音質はすこしだけ音の明瞭感が曇った感じがする
 22Ω ・・・ ノイズはほとんど聞こえない。音量が少しさがるせいか音全体の勢いが少し減る
 33Ω ・・・ ノイズは聞こえない。音質はかなり音が曇る。もこもこしてる

といった感じになります。33Ω程度でもここまで音質変化があるのに驚きました。
最終的にバランスのいいところで10Ωにしました。CK100PROもSRH840も音質的な影響は無視できるレベルです。
R4はヘッドホンを繋いでない時の負荷抵抗です。出力にカップリングコンデンサが無いので不要かもしれませんがおまじないに入れてあります。


結局のところ、直列抵抗の追加で対策になりました。
市販の抵抗入りケーブル(アッテネータ)にもこういった製品があるのでわざわざ基板改造してまで対策するものではないかもしれません。実際ヘッドホンによっては気にならないわけですので・・・
紹介だけですが
Etymotic Research ER38-24
COWON LIAAIL SC
audio-technica AT3A50ST/0.5
このあたりがアッテネータとして使えます。(リンクはamazonです)
使うヘッドホンに合わせてこういった物を挟むのもいいかと思います。
ただ抵抗値によって大きく影響受けるものもあるので、その場合は紹介したような出力フィルタ回路を組むのも悪くないと思います。


LV1-HPAMの回路図はトラ技の2012-7月号に載っています。ここで掲載するのはまずいので興味のある方はバックナンバーを購入、もしくはマルツでLV1-HPAMを購入すると回路図付いてきます。