2015年9月23日水曜日

DAP紹介(2) NW-ZX2

次はNW-ZX1の後継、NW-ZX2です。
記事執筆中(2015/9)の時点でWalkmanの中で最高級機種に相当します。



NW-ZX2 スペック
OS:Android 4.2
CPU:Ti OMAP4 Dual-Core 1GHz
RAM:2GB
ストレージ:128GB(SDカードで拡張可:128GBまでは確認済み)
電池容量:1860mAh
外形寸法:64.7×130.4×16.2mm(最薄部:14.0mm)
重量:235g
操作:4.0型タッチパネル+側面ハードキー(六個)
再生動作時間:60時間
DAC:アンプと一体型のS-Master HX
ヘッドホン出力:シングルエンド, 15mW+15mW(16Ω)
ライン出力:あり(Dockコネクタ)
デジタル出力: USB-AUDIO接続(Dockコネクタ)
Bluetooth:Ver3.0 A2DP(SBC,LDAC)/AVRCP/OPP/HID/SPP
再生フォーマット:DSD,mp3,wma,ATRAC,wav,AAC,FLAC,Apple lossless,aiff
(サンプリング周波数:192k/24bitまで対応。DSDはPCM変換再生)
エフェクタ:イコライザ5バンド、 DSEE HX

ルックス
重みのあるアルミ削り出し筐体は黒く統一されシンプルな美しさがあります。
ZX1のスッキリとしたイメージはなくどっしりとした高級機の貫禄があります。
背面はラバー仕上げで滑りにくくなっており、ZX1からの段差も健在です。

ヘッドホンジャックの巨大な真鍮パーツはZX1より更に大きくなりました。
筐体分厚くなったのに真鍮パーツも大きくなったので出っ張りも健在です(笑)
これそんなに大きくして意味あるんでしょうか・・・?



サイドの操作ボタンは大型化されて押しやすくなった反面、もの凄く「ダサく」なりました。
特に音量の+と-の文字サイズはあり得ないです。なんでこんなに大きいんでしょうね。

デザイン的には全体的にずんぐりむっくりしています。
ZX1を所有していたのでどうしても比べてしまいますが、ZX1のシャープな格好良さはありません。
側面のラウンドデザインは筐体を妙に大きく見せてしまう上に高級感が削がれます。
表面がさらさらしているため滑りやすく「重いのに持ちにくい」という、あまり良くない感触です。

仕上げや個々のパーツはよく吟味されていて高級感はありますが、個人的にはデザインは正直好みではありませんでした。
同時期に発売されたPHA-3も似たようなデザインなので共通のデザイナーかと思いますがSonyらしいデザインではない様に思います。

ハードウェア
ZX1からスペックは大きく変わっていません。
CPUは同じです。RAMは2GBに増えました。
ストレージは128GBのままで、SDカードが使えるようになった事が大きな改善点です。
あと本体スピーカが無くなりました。(いいのやら、よくないのやら・・・)
ZX1の欠点だったバッテリー容量はほぼ2倍になり動作時間はかなり延びました。
主たるS-MasterはZX1から変わっていませんが、細かい部分でかなり改良が加わっています。

・シャーシをアルミと金メッキ銅板のハイブリッド構造に変更
 GND/アースの強化でしょうか。安定した低音が見込めそうです。
・新開発のバッテリーパック搭載
 ZX2専用にバッテリーパックを専用開発しています(異様なコストはこういうとこに出てるんじゃ…)
 低抵抗化(ZX1の半分の19mΩ)、大容量化(1860mAh)とありますが、専用設計までして拘る部分だったんでしょうか?電源は大事ですが電池の内部抵抗の影響は微々たる物で少し疑問です。
・電源に電気二重層コンデンサを追加
 S-MasterはD級アンプなので低周波駆動に瞬間的な電流を要求します。
 補助的な電力備蓄でしょう。本当は大容量の電解コンデンサを積みたかったんだと思いますが・・・
 電気二重層コンデンサは内部抵抗が高いため充電が遅く、電源インピーダンスも高いのでオーディオにはあまり使われません。音にどう影響あるのか楽しみです。
・プリント基板に厚膜銅箔プリント基板を採用
 これも主にGNDの強化がメインでしょう。ZX2は徹底して安定性を重視した設計の様に思います。
 GND面積も2倍だそうです。
・ヘッドホン出力ジャックを4極化
 これは後ほど・・・通常の3極から4極になっています。
 このため見た目はZX1ではスリーブ(ジャックの根元部分)まで金メッキ部品があったのがZX2では根元はプラスチックのままになっています。
・2系統のクロックを搭載
 44.1k系と48k系に別々のクロックを搭載しています。44.1/88.2/176.4kと48/96/192kの2系統のマスタークロックを切り替えて安定したシステムクロックを供給出来る、らしいですがよくよく考えると48k系はあまり音源ソースが無いんですよね・・・2相クロックを搭載することでお互いに干渉し合わないか不安の残る部分ではあります。
・オーディオラインの最適化
 ヘッドホン出力のLCフィルタに大型コイル、フィルムコンデンサを採用。デジタルアンプにとって最終段のLCフィルタは音質の命とも言えるので、ここはZX1との音質改善に大きく期待出来そうです。
 
WM-portなどの仕様は特に変わりなし。互換性の低いUSB-AUDIOもZX1と変わりません。
ラインアウトなども全く同じです。相変わらずラインアウトの音量は低いです。
ヘッドホン出力も駆動力自体はZX1と同じです。大型ヘッドホンを駆動するにはパワー不足が否めません。

ソフトウェア
ここもZX1との比較がメインです。
OSはAndroid 4.2になりました。ZX1にあった余計なアプリはかなり減りました。
またシステム領域が2GBになりました。これでアップデートの際に容量不足はまず起こらないでしょう。
W.ミュージックアプリ自体はZX1とあまり変わっていません。
ソフトウェアで最も大きな違いはBluetoothのコーデック追加です。
LDACというソニー独自のハイレゾ対応コーデックが使えます。
LDACについては主観ですがMDR-1ABTで聞いたところ「apt-xと同じかちょっといいくらい」のイメージを受けました。
というのもLDAC対応でハイレゾを聞き分けられるほどのヘッドホンレシーバがまだ無いため、なんとも評価しがたいのが現状です。 (MDR-1ABTは残念ながらそこまでハイクオリティなヘッドホンでは無いので…)

音質など
今現在、ZX1持っている人が店頭でZX2を視聴してもほとんどの人が違いが分からないと思います。
事実、自分も最初はそうでした。倍近いコスト掛けて何も変わってないじゃない、と。
実際に購入してじっくりと聞き込むと、良くも悪くもその違いが分かってきました。

まずZX1の音質の特徴である「全体的にハキハキしていてとてもクリア」という印象からはガラっと変わりました。ZX2は「全体的に大人しくなり自然な柔らかい感じ」に聞こえます。
特に中音域の表現がとてもいいです。ボーカルの艶やかさが控えめだったZX1に比べZX2はとても艶めかしく濃密です。欠点だった低音も深さ、沈み込みといった「重み」が出ています。
音場の広がりは決して広大ではないのですが、豊かで繊細で聞きやすい印象です。
(これは使うイヤホン/ヘッドホンで大分変わりそうですが)
ZX1で気になっていた部分がしっかりと改善されています。
総じてすごく上品で安定した聞きやすい音というイメージを受けました。
デジタルアンプでこの音質は素晴らしいと思いました。さすがはSonyです。
反面、ZX1にあった「明るさ」と「ハキハキ」というキャラクターが薄れてしまい、何を聞いても上品に再生してしまう一面があります。結果的に歪みの多い音など迫力に欠ける印象はあります。

ZX2の音は「デジタルアンプの完成された音」でヘッドホンアンプなどを繋いでも改善どころか改悪になる場合もあります。ZX1は「不満の残る音」だったので、外部DACやヘッドホンアンプを繋ぐメリットがありましたがZX2はそれ単体で十分過ぎるほどの完成された音が楽しめます。
(逆の意味でZX2は外部アンプを繋いで音質改善図る楽しみがあまり無い、とも言えますが)

また一つ大事な点ですが、ZX1もZX2もデジタルアンプ(S-Master)という仕組み上、ヘッドホンアンプ出力部のLCフィルタの定数を接続するイヤホンのインピーダンスに合わせないと設計者の意図した音にはなりません。ZX2は16Ω(らしい・・・?)ので繋ぐイヤホンもそれくらいであればベストでしょう。
Sonyのイヤホンは32Ωが多い(XBA-Z5やXBA-A3など)ので、その辺りでいい感じに聞こえる様にチューニングされているのではないかと思います。
(本レビューはK3003(8Ω)で聞いているので他のイヤホンだと変わって聞こえるかもしれません)
良くも悪くもイヤホンによって鳴り方が変わることが特徴です。


気になる点
ZX1から様々な改善を見込んだZX2ですが・・・気になる点は多くあります。

1.お値段
いやもう高すぎでしょう。ZX1の時にコスト度外視で・・・とか言ってましたがあれはなんだったんでしょうね。
ハードウェアの所でもありましたが電気部品に専用設計品があり、機構部品はほぼ全て専用設計です。
ZX1の欠点をなんとか改善したい、という意気込みはよく分かるのですがもう少し汎用部品でコストダウンできなかったんでしょうか。逆に言えば専用設計品をこれだけつぎ込んでこの値段は凄いとも言えます。

2.OSとソフトウェア
Androidを搭載しているのはいいとしても、本来の目的と異なるものが多すぎます。
本機はDAPであり音楽を聴くことが目的です。メールや地図などあっても使いませんし、そもそも通信手段がWifiしかありません。本機を持つ人ならそういった情報端末はまず間違いなく持っていると思われますので、スマートフォン的な使い方はまずしないでしょう。動画再生なんかも個人的には不要です。
余計なアプリケーションのせいでバッテリーを消費し、結果大容量バッテリーを積んで重くなるでは本末転倒です。
幸いにも使わないアプリケーションは凍結出来るようになっているので、ユーザに一任されているという事でしょうか。だったら逆に最初からは何も入れずシンプルな状態をリファレンスにしてほしかったと思います。
もっとも、そんな事よりスマホとかからリモートコントロール出来る機能とか付けて欲しいです。重いからいちいち出してくるのが面倒なのですよ。(こういう意見ないんだろうか?)

3.残留ノイズ
個人的にココが最も許せない部分です。
音質の部分で書くべきだったのかもしれませんが、無音時のホワイトノイズ(サーっというノイズ)がわずかながら聞こえます。ZX1よりは減りましたがZX2でも残っています。
高感度のイヤホンじゃないと聞こえませんが、一度聞こえるとすごく気になります。シーンとした静寂の中で鳴るピアノのような空気感が大事な部分でノイズが聞こえてしまうためイメージ台無しです。これ本当に10万超えるプレイヤなのか?と疑ってしまいます。
ちなみにライン出力でもこのノイズは聞こえます。なので完全に対策するにはZX1と同じく外付けのUSB-DAC(PHA-3など)を繋ぐしかありません。ただそれをやるとZX2の作り込まれた(?)アナログ部分を使わなくなるので、ZX2の価値が無くなってしまう気がしますが。

4. 起動時の盛大なノイズ
省電力化のためスリープ時にはアンプの電源をカットするようです。
これ自体は何も問題ありませんが、問題は起動時の挙動です。
電源オン時、もしくはスリープからの再生開始時に「サー」っというノイズが5秒程度かなり大きな音で鳴ります。(最初に大きなサー音がでて段々小さくなる)
おそらくアンプに使っている電気二重層コンデンサへのチャージ時間だと思いますが、これなんとか対策出来なかったんでしょうか。
「初回の一度だけならいいじゃない」という意見もあるかと思いますが、実際使うとすごく鬱陶しいです。
ディスプレイ消えてる状態で再生停止すると、即スリープになるため次の再生時に起動ノイズが出ます。
つまり曲を一時停止して再生するだけでもこのノイズに悩まされるのです。
ディスプレイが点灯した状態での一時停止ならノイズは出ませんが、曲の再生停止にいちいちディスプレイ点灯させてタッチパネル操作なんかせず側面のキー操作で行うのが普通だと思います。でもそういう操作をすると上記の通りノイズに悩まされる。
正直こんな不都合付けてまで電気二重層コンデンサを積まなきゃいけなかったの?と思います。
当然ながらZX1にはこんな不具合(これ不具合レベルでしょう?)はありません。
注意書きはありますがそういうもんじゃないでしょう。Sonyの製品と思えません。
またこの起動ノイズが5秒で収まっても、前述の残留ノイズのサー音が残り続けるので聴いてる印象としてはずっとノイズが鳴り続けてるような錯覚を受けます。最低のクソ仕様です。

5.4極ジャック?
ZX2はイヤホン端子に3極ではなく4極ジャックを搭載しています。
本機種を調べている人は何処かで見かけたと思います。「GND分離」と。
ZX2の出力はアンバランス出力でバランス出力ではありません。アンバランスでもL/Rの回路を分離しGND結合点を理想ポイントで繋ぐことでL/Rセパレーションを改善することが出来ます。
これを一般に(一般なのかな?)GNDセパレーション設計とかGND分離設計とか言いますが、ZX2に関してはこの様な設計にはなっていません。(Sonyも一切そんな事言ってない)
基板の分解写真を見れば分かりますが(インプレスの記事「7つのOS-CONを搭載」の写真参照)L-GNDとR-GNDは同じベタGNDパターンに繋がっておりL/Rセパレーションに特化したパターン分離も特に配慮されていません。
よくZX2のGND分離配線で、プラグ先端から L+,R+,L-,R- という記事を見かけます。内部配線上はそうなっていますがGNDは直結合なので4極化する意味はありません。
ただプラグとジャックの相性のようなもので根元のスリーブ(信号で言えばR-)の接触が良くない事があるようです。その際4極化して疑似バランスっぽく聞くと右の音が不安定になり全体的にステレオ感がおかしくなる事があるようです。(耳のいい人は酔ってくるくらい気持ち悪いとか。わたしはそこまで感じませんでしたが)
トークショーで明かされていますが、元々は4極にしてリモコン対応にする予定だったそうです。そもそもこの考えがおかしい(イヤホン付属してない時点で汎用設計にすべき)と思いますが、こんな事するくらいならZX1と同じ3極ジャックでよかったんじゃないの?と思います。リモコンとかデジタルノイズ混入の元です。

総評
ZX1から着実に「音」を改善してきました。同時に高級感を高めてプレミア感も上がっています。
反面、人によっては大きな欠点とも取れる部分を持ち合わせています。
また大型化による重量アップはポータブル機としてはマイナス要素です。
ZX1から買い替えを検討する人も多いと思いますが、個人的な印象ではZX1の方が出来がいいです。
じゃZX2って何がいいの?というと・・・
  音、は良いです。これは間違いなく。でも個人の好みのレベル。
  バッテリーの持ちは凄くいいです。他社のDAPの倍以上あるでしょう。
ぐらいかなと。気になる点を寛容できるのであれば良い機種と言えます。

個人的に期待してガッカリだったのは4極ジャックの仕様です。
冷静になれば基板写真見るだけで気がついたのですが、いろいろなサイトやメディアの「噂話」に乗せられた部分があり手持ちのイヤホンを片っ端から3.5mm4極バランス改造した後に気がついて熱が冷めました。
(4極化したイヤホンで聴いても、ぶっちゃけ音は「よくなった気がする」程度で違いは明確には分かりませんでした。たぶん改造した、っていう実績からくる思い込みでしょうね)
不確かな情報に振り回された自分が悪いのですが、やはり自分の耳でちゃんといいと判断しないと駄目ですね。

そんな感じでZX2はハイエンドとしてはあまり良い印象を持てませんでした。
お勧めできるか?と言われると正直お勧めは出来ません。
Sony製品は好きだし方向性も好みなので、次機種ではもっといい方向に頑張って欲しいと思います。

1 件のコメント:

  1. ZX2は糞仕様なんだろ?AK380でも、買ったらいいんじゃね~!

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